あなたは何色の人ですか。

空。青い空。雲のない空。どこまで見渡しても空。そして限りない水平線。

僕は海の上に立っていた。広い海の上に。広い空を眺めていた。ただ青い空と青い海に挟まれていた。 

太陽はなかった。でも、光があった。空は明るく、光に満ちていた。

僕は歩いた。海の上を。微かに揺れる波の上を。裸足で歩いた。

けれど僕は沈まなかった。

僕がいくら歩いても、景色は変わらなかった。

ときどき後ろを振り返っても自分がどこから歩いて来たかは分からなかった。

二色のブルーがそこにはあった。

海の底を覗こうとしても、まるでインクのように深いブルーをたたえているだけであった。

それでも僕は歩いていた。

 

好きな色は?ときかれるたびに、僕は小さい頃から青だと答えてきた。

お気に入りのものは大体青。何色かのなかから選ぶとなるとほとんど無意識に青を選んでいた。

そのせいなのか、僕のイメージカラーは青になった。海が好きだったり、僕と青の関係は幼馴染かそれ以上である。

筆箱も青、セーターの色も青、中学のとき、友達が誕生日プレゼントにとくれたボールペンも青いものだった。

 

なぜ青が好きなのか。

そう聞かれてもいつも困ってしまう。海が好きだから。いつもそう答えるけれど、そうではない。海の好き嫌いに関わらず自分は青が好きなのだ。かといって好きだからと青を選ぶのではない。赤と黄色と青が並んでいたら青を無意識に選んでしまう。まるで青が僕のことを選んでいるかのようなのである。

 

なぜ人は好きな色があるのだろう。

赤が好き、黄色が好き、金色が好き、黒色が好き、人によって好きな色は違う。なぜその色が好きなのか。そう聞いてもちゃんと答えられるひとはそういない。情熱的だから赤が好き。自然が好きだから緑が好き。本当にそうなのだろうか。

このような曖昧な要素を孕んでいるにも関わらず、人は好きな色を持っている。

小学校の自己紹介などでは必ず好きな色を聞かれる。

いつからかはわからないが、不思議と私たちは特定の色を好きになっているようだ。

 

僕が青を好きになったのはなぜなんだろう。

自分のことなのに自分でもわからないものを突然知りたくなった。

青といえばクールな色、静かな色、悲しみの色、そう表現することが多い。プラスではなくマイナスで、赤が陽だとすれば青は陰だといわれる。

水の色、涙の色、空の色。

青色はどこか落ち着いていて、目立たない。

そんな青の性格に惹かれたのだろうか。

 

もしかしたら、好きな色はその人の生き方を写すカラーになっていくのかもしれない。