【小説】太陽は語らない
第一章 旧友は多くを語らない。
小学生の頃、誰もが夢を聞かれた。
俺はサッカー選手になるんだ。
翔太はサッカーがうまかった。
俺には真似できないボール捌きとシュート、パスの出し方、全てが洗練されていた。
俺はどんな時も翔太に劣っていた。
俺は努力した。翔太に負けたくなかったから。
けど届かなかったんだ。
翔太は中学卒業後、サッカーでは名の知れた有名校に推薦で入学した。
プロの卵達が山ほどいるような学校であった。
翔太はその中でも目立っていた。
高校サッカーの大会では得点王として異例の活躍を見せていた。
だが、ある夏の大会で翔太は怪我をした。
前十字靭帯断裂というので、サッカー界では引退に追い込まれる人の多いものだった。
プロにはなれない、
彼の中で強く太くぴんと張りつづけてきた糸がぷつりと切れた。
大学に入ってから翔太の話は聞かなくなった。
ある日、突然小学校時代一緒にサッカーをしていた秋斗から連絡があった。
「今度飲みに行かないか?翔太もくる」
久々に会うこともあり、俺は快諾した。
新宿の東口、小学生だったおれらには都内の中心で一緒にお酒を飲むなんて想像もしなかっただろう。
翔太は小学生から変わっていなかった。ガタイはいいし声も低かったが、昔からの純粋で明るい性格は一言話すだけでわかった。
「よう琢磨、久しぶり元気か?」
俺ら三人は秋斗がよく行くと言う大衆居酒屋に入り、お互いビールを頼んだ。
小中時代のたわいもない昔話や高校大学のこと、久しぶりなせいもあり話は尽きなかった。
ちょうどよく酔いが回ってきた頃、
翔太は用事があるらしくひとり帰っていった。
秋斗とおれは場所を変えて飲むことにした。
周辺の飲めるところをネット検索し、ワンコインで飲めるというバーに行くことにした。
秋斗がジントニックを頼むというのでおなじものにした。
秋斗は顔を赤らめて、くだらない冗談を言う。
おれは昔から変わらない秋斗に安心感を覚えていた。2杯目のジントニックを頼み、待っていたところ、
「翔太ってさ、昔から俺らに自分のこと喋らなかったよな。」
急に真面目な顔になって、秋斗は話し出した。