【童話】忘れてしまうカエルの話

とある小さな公園の小さな池。

そこにひとりぼっちの忘れっぽいカエルが住んでいました。

カエルはその日あったことも、次の日には忘れてしまいます。

 

ある日、そんなカエルのいる池の公園に桃色の桜が咲きました。

綺麗だなぁとカエルは花を見上げました。

春の生ぬるい風がカエルを包みました。

 

「ご飯が出来たわよー」

カエルの大好きなハンバーグのいい匂いがします。

家に帰るとお母さんがいました。

「さぁお食べなさい、今日は楽しかった?」と満面の笑みで聞いてきました。

「えっとね!桜の花が咲いたんだ!」

 

「今日はお母さんに会えた。やっぱりお母さんのハンバーグは世界一だ!幸せな一日だったなぁ。」

カエルは眠りにつきました。

 

次の日にはカエルはお母さんのことを忘れてしまいました。

「昨日はなんだか幸せだった気がするな。」

 

しばらくすると、雨がよく続く様になりました。

「雨は大好きだ。ジメジメして、ウキウキだ。」

カエルは葉っぱの傘を持って散歩に出かけました。

しばらく歩くと、木の下で雨宿りしているカエルの女の子ジェニーがいました。

 

「カエル君じゃん!遅かったね!」

そうして二人は一つ傘の下歩き始めました。

カエルはなんだかドキドキしていました。

「僕、ジェニーちゃんのこと好きだよ」

気づくと、カエルくんは言ってました。

「え、わたしも」

 

「今日は大好きなジェニーちゃんに会えた。

なんだかドキドキした1日だったな!」

カエルは眠りにつきました。

 

次の日にはカエルはジェニーちゃんのことを忘れてしまいました。

「昨日はなんだかドキドキした気がするな。」

 

数日が経ち、カエルの池には暑い日々がやってきました。

強く照りつける日差し、木々達は青くきらきらと輝いていました。

「暑いから、泳ぐか!」

とカエルは池に飛び込みました。

「つめたいけど、気持ちいいなー!」

カエルがおよぎはじめると、

 

「おーい!向こうの岸まで競争だ!」

親友のカエルのベンが隣で泳いでいます。

「まけるもんかー!」

夕方になるまで2人はずっと泳いでいました。

 

「今日は友達のベンと会えた!クタクタだけど、楽しかったなあ!」

カエルは眠りにつきました。

 

次の日にはカエルは友達のことは忘れてしまいました。

「昨日はとっても楽しかった気がする!」

 

カエルの池の木々は赤や黄色に色付き、葉っぱ達は綺麗な絨毯を作りました。

 

そして冬が過ぎ、

木々達が春の準備をしているある日の夕方、毎日の散歩が終わり、

「今日もいつもと同じなんにもない1日だったな!さあ家に帰ろう!」

 

家に帰るとそこには、満面の笑みを浮かべる

お母さんお父さん、そして恋人のジェニー、親友のベンがいた。

「お誕生日おめでとう!!!」

「そっか、今日は僕の誕生日なんだ!」

みんなでプレゼントと豪華な食事、ケーキでお祝いしてくれた。

 

「あぁ僕はなんて幸せものなんだろう。今日は今までで最高の日だ。」

 

そういってカエルはまた眠りにつくのでした。

 

次の日には全部忘れてしまいました。

「なんとなくだけど、僕は最高に幸せだ。」

 

カエルはそうやって一年を繰り返すのでした。

何かの拍子にふと、思い出すのです。

次の日には忘れてしまうけれど、自分が世界一愛されているカエルということを。